98%の日本人が『ビタミンD不足!?』
先日、東京慈恵医科大学が行った調査(2019年から2020年3月までの期間に東京都内で健康診断を受けた5,518人を対象に行った調査)にて、98%の人がビタミンD不足(<30ng/ml)であったという報告が、ニュースで取り上げられていました。
98%ということは、ほとんどの方がビタミンD不足ということになります。
ビタミンDは骨を作る為に大切なビタミンであることは広く知られていますが、実際にはそれだけではありません。
体の様々な機能に関係しており、産婦人科領域においても、妊娠における免疫機構や卵巣機能と関係し、受精卵の子宮内への着床や妊娠後の妊娠維持、卵胞の発育に関わっています。
そこで今回は、産婦人科領域においてもその重要性が注目されている、ビタミンDについて取り上げたいと思います。
ビタミンDの役割
ビタミンは大きく分けると水溶性と脂溶性に分かれます。
ビタミンDは脂溶性のビタミンです。
そして、人の健康維持において、様々な役割を果たしていることがわかっています。
以下がビタミンDについて分かっている主な役割です。
- カルシウム吸収と骨の健康維持
- 免疫機能の調節
- 筋肉の調節
- 心血管の健康維持
- 神経機能のサポート
この他にも、細胞の分化や増殖の調節、抗炎症作用、抗がん作用など、様々な生理的機能に関係していると言われています。
産婦人科領域におけるビタミンDの重要性
体の様々な機能に関与するビタミンDですが、産婦人科領域においても、ビタミンDが不足することで、様々なリスクが上昇することがわかって来ました。
1,妊娠合併症リスクの上昇
ビタミンDが低下している状態で妊娠すると、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが上昇すると言われています。
2,多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の悪化
PCOSの方の多くが、ビタミンD不足と言われています。
ビタミンDの不足のみでPCOSを発症する訳ではありませんが、ビタミンDが不足することでPCOSの病態が悪化すると言われています。
その為、ビタミンDを適切な濃度に維持することで、排卵障害が改善する可能性があります。
3,不妊のリスク上昇
ビタミンDは、妊娠における免疫機構や卵巣機能と関係し、受精卵の子宮内への着床や妊娠後の妊娠維持、卵胞の発育に関わっていることがわかっています。
その為、ビタミンDが不足することで、着床率低下、流産率上昇、卵巣機能の低下が生じる可能性があります。
4,胎児への影響
ビタミンDは、脳の正常な発育に重要な役割を果たしています。
その為、母体のビタミンD不足は、胎児の脳の発達に影響を与える可能性があります。
以上のような理由から、妊娠前からビタミンD不足を解消しておくことが大切です。
ビタミンD不足を補うために出来ること
ほとんどの日本人で不足しているビタミンDですが、今までお話してきたように、不足することで様々リスクが上昇します。
では、どのように補えばよいのでしょうか?
1,日光浴
日光はビタミンDの主要な供給源です。
皮膚が直接紫外線にさらされることでビタミンDが合成されるため、適度な時間日光浴を行うことが必要です。
一般的には夏であれば5分、冬であれば20分程度の日光浴が必要と言われています。
ただし、日焼け止めや日傘を使用して紫外線を遮ってしまうと、十分な効果は得られません。
紫外線による皮膚のダメージや皮膚がんのリスクを考慮すると、日光浴は避けたいと思われる女性の方は多くおり、日光浴をするか否かは皮膚へのダメージと天秤にかける必要があります。
2,食事からの摂取
ビタミンDは食品からの摂取も可能です。
脂の多い魚(サーモン、マグロ、ニシン、サバ)にはビタミンDが豊富に含まれています。
その他にも、魚の肝油、卵黄、チーズ、乳製品などにも、ビタミンDが含まれます。
これらの食品を積極的に摂取して頂くことが大切です。
しかし、食事だけで十分なビタミンDを摂取することが難しい場合も多く、他の方法と併用することが必要です。
3,サプリメントからの摂取
ビタミンの摂取が不足している場合には、ビタミンDのサプリメントを摂取するのもよい方法です。
一般的に推奨されるサプリメント量は400IU(10μg)/日ですが、日光浴が十分に出来ない場合には、この量では足りません。
サプリメントの量を決める上では、血液検査を行いビタミンDの不足している程度を確認した上で必要量を摂取するのが理想です。
まとめ
今回はビタミンDについて書きました。
日本人のほとんどがビタミンD不足であることが、最近の研究で明らかになりました。
その為、日光浴や食事を意識しつつ、サプリメントで補うことが大切です。
自分のビタミンDの値を知り、その数値に応じて適切な量のビタミンDのサプリメントを摂取しましょう。